美容師という職業は、人を美しくし、笑顔にできるとても素敵な仕事です。街で輝く美容師やSNSで発信する人気スタイリストに憧れて、この道を志す人は少なくありません。しかし、華やかな世界に飛び込んだ若い美容師たちを最初に待ち受けているのは、アシスタントという修行期間です。
アシスタント時代は「一人前のスタイリストになるための大切な準備期間」と言われますが、現実には想像以上に厳しく、多くの悩みを抱えることになります。ここでは、美容師アシスタントが直面しやすい5つの悩みを取り上げ、その背景や意味を掘り下げていきましょう。
1. 低賃金で生活が大変
美容師アシスタントの給与は決して高いとは言えません。地域やサロンによって差はありますが、初任給は一般企業の新入社員に比べてかなり低い水準にとどまることが多いです。
特に一人暮らしをしている人にとっては、家賃・光熱費・食費をまかなうだけで精一杯。中にはアルバイトを掛け持ちしながら生活費を補う人もいます。さらに、美容師としての技術を磨くために練習用のウィッグや道具を自費で購入する必要もあり、経済的な負担は大きいのです。
「好きな仕事だから頑張れる」と前向きに取り組む人も多い一方で、「このまま続けられるのか」と将来に不安を感じてしまう人が少なくありません。
2. 休みが少なく、練習でさらに時間が削られる
美容室は土日祝日が繁忙期。必然的にアシスタントの休みは平日中心となり、しかも月に数日しか取れないこともあります。朝は早く、夜も遅くまで営業しているサロンでは、体力的に消耗しやすい環境です。
さらに厳しいのは、休みや営業後の時間を「練習」に充てなければならない点です。シャンプー、ブロー、カラー塗布、パーマ巻きなど、習得すべき技術は山のようにあります。
休日返上で練習に励む人も多く、「体を休めたいのに休めない」というジレンマに苦しむアシスタントは少なくありません。結果として「プライベートがない」「友達や家族との時間が作れない」と孤独を感じる人もいます。
3. 技術習得の壁とプレッシャー
美容師は技術職であり、成長には練習の積み重ねが不可欠です。しかし、その過程は決して簡単ではありません。
アシスタントは、まずシャンプーやマッサージといった基本から始め、徐々にカラーやパーマ、ブローの技術を学びます。それぞれの技術にはサロン独自の基準やテストがあり、合格しないと次のステップに進めません。
「何度練習しても先輩に合格をもらえない」「同期が先に進んで焦る」という状況は、精神的に大きなプレッシャーとなります。中には「自分は不器用なのではないか」「美容師に向いていないのでは」と悩み、挫折してしまう人もいるほどです。
しかし、この壁を乗り越えたときに初めて、お客様を担当できる自信と実力が身につきます。大変ではありますが、このプロセスを避けて通ることはできません。
4. 人間関係のストレス
サロンはチームで動く職場です。先輩・後輩の上下関係がはっきりしており、礼儀やマナーが徹底して求められます。そのため、アシスタントは人間関係に悩むことも少なくありません。
例えば、先輩から厳しく指導されるのは当たり前。時には理不尽に思えるような注意を受けることもあります。また、同期同士でも「誰が早くスタイリストデビューするか」という競争意識が強く、仲間でありながらライバルでもある微妙な関係性に悩むこともあります。
さらに、お客様への接客においても緊張感は尽きません。シャンプーひとつで「気持ちよかった」と言われることもあれば、「雑だった」と不満を持たれることもあり、常に気を遣い続ける必要があります。
こうした人間関係のプレッシャーは、時に技術習得以上に大きな悩みとなるのです。
5. 将来への不安
アシスタント時代の悩みの中で、最も大きいのが「将来への不安」でしょう。
美容師の世界は厳しく、途中で辞めてしまう人も少なくありません。周囲で同期や先輩が辞めていく姿を見ていると、「自分も続けられるだろうか」と不安になるのは自然なことです。
また、スタイリストデビューできたとしても、指名客を獲得できなければ収入は上がりません。「自分にお客様がついてくれるのか」「人気美容師になれるのか」といった将来像を思い描くと、心が揺らぐ瞬間は誰にでも訪れます。
しかし逆に言えば、この不安を乗り越え、努力を積み重ねた人だけが、自分の理想とするキャリアを手にすることができます。
まとめ ― 悩みを糧に成長するアシスタント時代
美容師アシスタント時代は、低賃金や休みの少なさ、技術習得の壁、人間関係のストレス、そして将来への不安と、多くの悩みに直面します。
一見すると厳しい環境ですが、この期間に積み上げた努力や経験は、必ずスタイリストになった後の強さに変わります。お客様に信頼され、指名をいただけるようになるまでの道のりは決して平坦ではありませんが、苦労した分だけ達成感は大きいのです。
美容師を目指す方にとって、このアシスタント時代は避けては通れない試練です。しかし、悩みをただの壁と捉えるのではなく「成長の糧」として受け止めることができれば、きっと将来、大きな自信と誇りを持ってハサミを握る日が訪れるでしょう
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